月曜ドラマシリーズ「緋色の記憶」
野沢尚サスペンス 緋色の記憶〜美しき愛の秘密〜
キー局:NHK
制作:2003年
放送:2003/01/06〜2003/01/27
原作:トマス・H・クック(翻訳・鴻巣友季子)「緋色の記憶」
脚本:野沢尚
出演:鈴木京香、夏八木勲、岸部一徳、國村隼(国村隼)、室井滋、市原隼人、秋定里穂、銀粉蝶、倍賞美津子、西田健
解説:米ミステリーの最高峰・1997年アメリカ探偵作家クラブ賞受賞作。トマス・H・クック【緋色の記憶】のドラマ化!
自由に生きたいと強く願った女性教師は、その純愛ゆえ、愛と運命に翻弄されていく。
昭和38年夏、とある田舎町に美貌の美術教師が赴任してくる。厳格な教育者の父の元で、「自由」を剥奪され鬱屈とした日々を送っていた画家志望の少年は、その奔放なまでの美術教師の「自由」な生き方に魅せられていった。
そんな彼女に心奪われたのは、少年ばかりではなかった。事態はやがて静かな田舎町を巻き込んでの「壮絶な殺人劇」へと変貌していく…。
各話タイトル
第1回「追憶」
第2回「密会」
第3回「疑心」
第4回「凶行」
第5回「原罪」(終)
ストーリー
第1回「追憶」
弁護士の濱田直行(夏八木薫)は、精神を病んだ幼なじみ・野坂奈々(銀粉蝶)が引き起こした殺人事件の弁護を引き受ける。これをきっかけに、彼自身の記憶の中にあった、ひとつの事件が蘇る。
昭和38年。とある田舎町の学園に、鮮やかな緋色のワンピースが似合う美術教師・吉住薫(鈴木京香)が赴任してきた。長年ヨーロッパで本物の芸術に接し、洗練された薫の存在は、静かな町に波紋を投げかける。そんな中、薫が住む湖畔のコテージの対岸にある同僚教員・藤枝(國村隼)の家から、藤枝の妻・粧子(室井滋)の悲鳴が聞こえてきた。
第2回「密会」
夜。薫(鈴木京香)は湖上に浮かぶ藤枝(國村隼)のボートを見ていた。ある日、薫は藤枝宅に招待され、粧子(室井滋)から手塩にかけた料理でもてなされる。しかし、その行為とは裏腹に、粧子はわき上がる嫉妬を押し殺していたのだ。
一方、直行(市原隼人)は藤枝が外洋に漕ぎ出すべくボートを修繕している事を聞き、手伝いを申し出る。薫の存在が少なからず、この地の人々の暮らしにさざ波を与えていく。そんな夜、薫と藤枝は湖上での密会を始めた…。
第3回「疑心」
薫(鈴木京香)と藤枝(國村隼)の密会は、ますます親密度を増していった。藤枝とともにヨット修理に夢中になった直行(市原隼人)は、二人がこのヨットで外洋に出て、幸せに結ばれることを願うようになる。ところが、そのボートが粧子(室井滋)によって破壊される。そして藤枝自身も薫との関係に悩み苦しんでいた。
そんな夜、どうしても薫への思いを断ち切れない藤枝は、歩いて薫のコテージへと向かう。しかし、彼の後ろには、二人の関係を疑う粧子と、何も知らない幼い娘の奈々(中原知南)の姿があった。
第4回「凶行」
薫(鈴木京香)は学園を去る決意をし、藤枝(國村隼)がコテージを訪ねても門前払いをする。ようやく修理を終え完成したヨットは、薫を乗せることなく処女航海を迎えた。少年・直行(市原隼人)の純真な思いとは別の次元で、薫と藤枝の関係は終息していった。
そんな中、直行の一言から粧子(室井滋)に殺意が生まれる。二人が駆け落ちをすると思いこんだ粧子は、車で薫をひき殺そうと暴走、殺人を実行に移す。しかし、そこに居合わせたのは…。
第5回「原罪」(終)
粧子(室井滋)は車ごと湖に転落、溺死。はねられた舞子(秋定里穂)は病院で息を引き取る。そして藤枝(國村隼)も海上で自らの命を絶ち、薫(鈴木京香)はこの地を去った。
4年後、病で死期の迫った薫の病室を訪ねた直行(市原隼人)は、そこで大人の恋の一部始終を理解する。そして現在、直行(夏八木勲)は心神喪失状態となった藤枝夫妻の子供・奈々(銀粉蝶)を前に、過去の行為を懺悔するのだった…。
公式ページに掲載された脚本家 野沢尚のことば
原作は海外ミステリー・ファンから「珠玉の名作」と謡われた作品である。四年前、週刊文春誌のベストテンで堂々の一位に輝き、「ミステリーは文学たりえるか、という命題に対する素晴らしい回答」と書評家には絶賛された。
当時、僕はすでにミステリー作家として文壇に出ていた。脚本家と小説家という二足のわらじを履くためには、「日本の作家で、現在生きている人の小説は脚色しない」という誓いを自分に立てるしかなかった。
この心情はなかなか説明しづらいのだが、要するに、脚本家と原作者というのはどうしても敵対関係になってしまう状況が多々あって、文壇で袖すり合う作家の小説を脚色するには、相当のストレスを覚悟しなければならない。
ならば優れた素材は海外の小説で探す。
この方針から、二年前、プロデューサーには権利獲得でご苦労をかけたが、ウールリッチの名作「喪服のランデヴー」を脚色することができた。素晴らしい仕事だったと自信を持って言える。
池端プロデューサー、渡邊監督と三人で「また仕事をしよう」と代官山の焼き肉屋で話し合った時、僕の方からトマス・H・クックの「緋色の記憶」をプレゼンテーションした。「喪服のランデヴー」をあの高いレベルで描けた監督なら、このハードルも超えてくれるだろうという信頼があった。
ミステリーは文学である。ならばテレビドラマも文学たりえるのではないか?
大人の鑑賞にたえうるテレビドラマが激減している今だからこそ、この物語の哀切感を多くの視聴者に堪能してほしいと思った。
アメリカの風土。時代背景。裁判制度の違い。脚色に際しては智恵を絞らなければならないことが多くあったが、この四月、一カ月問で五本の脚本を怒涛の勢いで書き上げた。
ラスト、病魔に冒されたヒロインの許に、かつての教え子が訪れる。原罪を背負った少年の耳元に、女教師は囁く。
「もう、許してあげる」
このセリフは原作にはない。
美しいだけなく、優しく、明晰なヒロインを造形したかった。鈴木京香さんはどんな悲しげな笑顔でこのセリフを囁いてくれるのだろうか。
精緻なパズル・ストーリーというだけではなく、この物語には「純粋であることは残酷である」という人生の真理が潜んでいる。
少年時代の夏草の匂いを思い出しながら、郷愁の彼方からいつ現れるか分からない「殺意」の切っ先に、目を凝らしていただきたい。
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